脳波測定マニュアル

脳波測定の注意点

脳波測定の注意点をまとめました。これから脳波測定を始める人、脳波測定をしてきたけどうまくいかない人、ぜひ読んでください。

被験者の健康状態

脳波測定において最も注意すべき点は、被験者の健康状態です。 脳波測定は、被験者の脳が作り出している超微弱な電位を測定するものですから、基本的には危険はありません。

脳波測定というと、頭にたくさんの電極をつけているのをイメージされる方がいらっしゃいます。 私は一般の方に「あれは、電気を流してるの?」とよく質問されます。 感電させられるのではないかと思っている人がいるのです。

これは大きな誤解ですね。“流している”のではなく“流れているものを測定している”だけなのです。 ですから、脳波測定は安全です。

ただし、測定する脳波の種類によっては、被験者の健康を害する場合があります。 例えば、定常状態視覚誘発電位(SSVEP)の測定では、高速に明滅する視覚刺激を用います。 この刺激によって具合が悪くなる人がいるのです。 アニメ「ポケモン」でも、ピカピカと高速に明滅する光によって具合が悪くなる人が多数発生する事件がありましたよね。

もちろん、SSVEPの測定では安全な速度(繰り返し周波数)で行われますが、それでも中には具合が悪くなる人がいます。 脳波測定という非日常感も影響しているのでしょう。

したがって、脳波測定中に被験者が体調不良を訴えたらすぐに測定を中止してください。 「もう少しだけだから我慢して」などといって測定を継続することは絶対にしてはなりません。

ノイズの除去

“脳波測定の腕”を最も左右するのがノイズの除去です。 せっかく測定した脳波でもノイズだらけでは、正しい研究は行えません。 脳波測定に慣れていない研究者の中には、脳波測定をしているつもりでいても、実はノイズを測定してノイズを解析してしまっている人もいます。 そこで、ここでは、ノイズ除去に関する3つの注意点(ポイント)を教えます。

交流電源等の外部機器

脳波測定を行うと、部屋の中にある様々な機器(交流電源、測定用PCなど)のノイズが測定データに紛れ込みます。 交流電源は50or60Hzのきれいな波なので、解析時にバンドパスフィルタも用いることで除去することもできます。しかし、やはり生データに混入させないほうが良いです。

そこで登場するのが電磁シールドルームです。金属で覆われた内部は、外部の電磁波の影響をいっさいうけません。これは電磁気学の基本中の基本です。ですから、被験者をシールドルームの中にいれて、外部機器から隔離してしますのです。もちろん、測定用のPCはシールドルームの外に出します。電線を通すだけの穴はありますから、そこを通して、被験者の頭と測定器を電線で結ぶのです。

徹底した洗髪

まさか、脳波キャップをかぶる前に洗髪をしない人はいませんよね?この洗髪は超重要項目です。 洗髪を甘く見てはいけません。洗髪の有無でデータの精度は大きく変わります。 シャンプーとブラシを使って徹底的に頭皮をゴシゴシしてください。

私は10分以上は洗います。頭皮全体を入念に。ただし、やりすぎて傷つけてはいけません。頭皮を油が落ちればよいのです。 この油を洗い落としきるかどうかで、頭皮のインピーダンス(抵抗)が変わってきます。

被験者の体動

これは測定に対する被験者の理解と協力が重要です。 測定中には被験者は全く体を動かさないようにします。 手をグーパーするだけでも、恐ろしいほどの振幅の筋電がのります。

また、“唾を飲み込む”行為も絶対に避けてください。 唾を飲み込むときの喉の筋電は、測定域を完全に振り切るほどです。 これは、被験者以外の人にはわかりにくいです。 自分で脳はキャップをかぶって、リアルタイムの測定画面を見てみるとよいです。 そのノイズっぷりに驚かされるでしょう。

その他

測定開始は、脳波が落ちついてから行ってください。 直前まで動いたり、体勢を変えたりしていると、バイアスがかかっていることがあります。 リアルタイムの測定画面を見て脳波が落ち着いていることを確認してから測定を開始します。

また、当然ながら、測定する室内は静かにしましょう。 会話なんてもってのほか。室内を歩く人がいると、その音に被験者の注意が向いてしまいます。当然、余計な聴覚誘発電位(AEP)を生じてしまいます。


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